はじめに──「移転費=賃料」だけじゃない!
新しいオフィスへ移転するとき、賃料や敷金・礼金ばかりに目が行きがちですが、実は“内装コスト”こそ予算オーバーの落とし穴。
「見積もりを取ったら想定より 30 % 高かった」「追加工事でスケジュールがずれた」など、移転プロジェクトの現場ではよく耳にする失敗談です。
そこで本記事では、オフィス移転を検討中の企業担当者向けに
- 見落としがちな内装コストの種類
- よくある“想定外出費”の発生ポイント
- 専門家も実践する節約テクニック
を“やさしく専門的”にまとめました。最後まで読めば、コストとクオリティの両立がぐっとラクになります。
1. 内装コストを構成する 5 大項目
項目 | 内容 | 見落としポイント |
---|---|---|
造作・間仕切り工事 | 壁・ガラスパーティション・ドアなど | 仕様変更の追加費が高額化しやすい |
仕上げ材・床/壁/天井 | タイルカーペット・クロス・塗装など | グレード差で坪単価が倍以上になる |
電気・LAN・空調 | 照明レイアウト、OAフロア、空調吹出口変更 | ビル側の制約で夜間工事=割増になる |
家具・什器 | デスク・チェア・収納・造作家具 | 既存家具がサイズ不適合→買い替え |
申請・管理費 | ビル管理申請、設計・施工管理費 | 申請図面や防災設備図の再作成費 |
ポイント: “見える工事”より “付帯工事” に費用が隠れがち。
例:LAN配線の床貫通コア抜き、照度基準変更による照明増設など。
2. 想定外出費が発生しやすい 3 つのタイミング
① 物件契約後のレイアウト変更
- 原因:物件固有の梁・柱や EV ホールとの位置関係を見落とし
- 対策:契約前に内装会社と現地調査し、ゾーニングを仮確定
② ビル管理会社への工事申請フェーズ
- 原因:防火区画/耐震補強などビル側追加条件で仕様変更
- 対策:申請図面提出の前に、ビル標準工事区分表を確認
③ 工事着工後の追加発注
- 原因:コンセント・LAN 口数不足、サイン追加、色替え指示
- 対策:モックアップ確認&仕様確定書を社内で回付し “あとから変更” を防ぐ
3. 専門家が教える節約テクニック 7 選
テクニック | 節約イメージ | ひと言アドバイス |
---|---|---|
1. 標準仕様を活かす | 壁下地を活かし塗装仕上げへ | “貼るより塗る” が安い |
2. OAフロア高を既存合わせ | 配線ルート短縮 | プチ段差を許容する柔軟さが◎ |
3. 造作家具→既製品+造作天板 | 30〜40%減 | 天板だけオーダーで高見え |
4. 什器の中古再利用 | チェアは美品中古を活用 | SDGs観点でも社内ウケ良し |
5. 夜間・休日工事を回避 | 人件費+割増 20%カット | ビルと昼間騒音条件を早期交渉 |
6. 分割発注より一括発注 | 管理費の二重払い防止 | 総合内装会社にまとめる |
7. 退去原状回復とセット交渉 | スケルトン⇔居抜き | ビル側に“相殺提案”を |
4. ケーススタディ:30 坪移転のコスト比較
項目 | 分割発注パターン | 一括発注+節約術適用 |
---|---|---|
造作・仕上げ | 250 万円 | 180 万円 |
電気・LAN・空調 | 180 万円 | 140 万円 |
家具・什器 | 120 万円 | 90 万円 |
申請・管理 | 40 万円 | 30 万円 |
総額 | 590 万円 | 440 万円(▲25%) |
結果: 25%のコストダウンに成功しつつ、レイアウト自由度も確保。
5. コストを抑えながら失敗しないプロセス
- 物件選定前から内装会社を巻き込む
レイアウト観点で“選んではいけない物件”を排除。 - 要件定義フェーズで優先順位を決める
“削れない必須”と“妥協できる箇所”をチームで共有。 - ビル側ルールを把握し逆算スケジュール
申請〜着工までのリードタイムを明示して予算余裕を確保。 - モックアップ&サンプル確認で追加防止
手触り・色味を事前確認→「イメージ違い」を撲滅。 - 引き渡し後 1 か月点検を契約に入れる
初期不良や追加配線を無償対応で交渉。
まとめ──賢く節約し、理想のオフィスへ
- 内装コストは「造作+付帯工事+申請費」で構成
- 想定外出費は契約前調査・仕様確定・ビル申請で防ぐ
- 節約の鍵は標準仕様活用・中古什器・一括発注
- 早期に専門家を巻き込み、優先順位を可視化することが成功の近道
限られた予算でも工夫次第で“機能的かつ魅力的なオフィス”は実現可能です。
ぜひ本記事のポイントをチェックリストとして活用し、移転プロジェクトをスムーズに進めてください。